ジョイ・ディビジョン
UKロック史上最も残酷で憂鬱な詩人、イアン・カーティス。
ロンドンで巻き起こった"パンク"の影を背負いながらニュー・ウェーヴへの道を切り拓き、マンチェスターという土地に奇跡の火を灯したジョイ・ディヴィジョンが、その後のシーンに多大な影響を及ぼしたのは周知の事実だ。それはもちろん、パンクの方法論とダンス・ミュージックの融合や、マイナー・コードがひた走るアブストラクトなスタイルの確立といったサウンド面でもいえることである。――しかし、それ以上にイアン・カーティスという存在が投げかけた衝撃は、音楽という「創造」をも揺さぶる強烈なものだったのではないか。純粋なまでに吐露される絶望と混乱の歌詞、そして、地の底を這いつくばるかのような重々しいヴォイス……。ジョイ・ディヴィジョンから感じられるどうしようもない不安感は、イアンの情動そのものなのだ。彼の自殺による事後風評が、そういった印象を生み出しているのではない。何故なら作品に息づいているのはすべて“生きている時間”における空想と破滅の物語なのだから――。イアンの死後、残りのメンバーはニュー・オーダーを結成している。
5/17から渋谷シネ・アミューズにて、グラント・ジー監督によるドキュメンタリー『JOY DIVISION ジョイ・ディヴィジョン』が公開される。
ちなみに5/18は、イアン・カーティスの命日である。