【第一次世界大戦前夜】 ナポレオン戦争以後、用兵面ではジョミニの思想の影響が大きかったものの、火力の発達からジョミニ的な戦術の限界が見受けられるようになってきた。 そのような状態の中、ジョミニを筆頭とする旧来の原則にとらわれることなく、戦略を臨機応変の体系と定義し、時代の変化や技術の進歩に合わせて適切な統帥術や用兵術を編み出したのがドイツのモルトケであり、『高級指揮官に与える教令』の中に彼独自の「委任戦術(訓令戦術)」などに関する優れた記述が残されている。普墺戦争や普仏戦争での輝かしい勝利によって名声を獲得し、時代の寵児となったモルトケであったが、普仏戦争での経験から将来のヨーロッパにおける戦…