6月。まだ少し肌寒い朝が続いている。 家の塗装工事が始まって数日、私は窓辺で、つい目で追ってしまう若い職人がいる。彼は毎朝、ぴたっとした速乾シャツを着て現れる。黒っぽいものが多いが、最初の日はミリタリー柄の迷彩シャツだった。そのシャツは彼の体にぴたりと張りついていて、迷彩という柄の強さとは裏腹に、どこか頼りなさと沈黙をまとっていた。彼自身は終始、口をきつく結び、誰にも視線を投げず、ひとりで自分の作業にだけ集中していた。あの迷彩服は、“見られること”に向けられたものではなく、むしろ“人を寄せつけないため”の鎧のようにも見えた。 黒も似合う。迷彩も似合う。その佇まいは、なんだか“男の象徴”のように…