時間の不可逆性、つまり、過ぎた時間は二度と帰ってこない、という当然のことを5年ほど前、40代なかばに差しかかった頃から真剣に考えるようになった。それまでは、仕事においても私生活においても、失敗しても、寄り道しても、立ち止まっても、ま、何とかなるわ、と前向きに、ある意味能天気に、未来を志向しながら生きてきたのだが、ちょうどその頃から、過ぎ去ったものや人、過去に訪れた様々な場所へ思いを馳せることが飛躍的に増えた。自分の体力的・社会的・経済的限界を意識するようになったのもその頃なので、未来の可能性よりは過去の思い出の方が魅力的になってきたのだと思う。この傾向は、パンデミックで日本へ行けなかった2年5…