三十日(ミソカ) をちかへり時鳥の鳴ヶば、 ほとゝぎすこゑなをしみそ庭に咲く花の卯月も明日はちりなむ 五月朔ノ日 あすは此家(ヤド)を出たゝむ、去年より馴むつびたる人々に、ふたゝびのたいめ、いかヾなンどおもふ曉郭公の鳴けば、 時鳥なみだなそへそ見る夢もこよひばかりの宿のまくらに ほどなう、しらみて、 二日になりぬ。 去年より、なにくれと、たのもしかりつる人々の情さすがに、けふの別れに、むねうちふたがり涙おつるを、心づよくも巳ひとつ斗にあゆひしてたちづれば、良知の弟(オトウト)良道の云、 別れては道のちさとをへだつともかきつめてとへ壺の石書(ブミ) と聞えたる返し。 書(カキ)かはし壷のいしぶみ…