八幡の神籬にまうでて久斯美多万(奇御魂)をも拝み奉らまく、いで、そのみやしろへとおもふに声高う舟よばひせり。こは、かみ川の行かひやあらん、とく/\と人々のいへば、いそぎほゐにはあらずて、そのかたをよそに出たつ。しかはあれど、去年、さをととしも、ぬさとりをがみ奉りし。 「あめつちとともにひさしくいひつげど」 とずんじて、こゝよりをがみ奉りて、あるじにわかれて、やはたを離れて川のべにいたれば、足とくあれ、舟いづとて、さかまく波を棹あまたの力してつきたり。いはや堂の里に至り、相しれる大和田なにがしのもとにつけば、三とせ斗近となりになづさひたる、前沢の福地なにがしこゝに在りて、きのふとひ来て待わびつる…