たづかなき 雲井に独《ひと》り音《ね》をぞ鳴く 翅《つばさ》並べし 友を恋ひつつ 須磨の源氏を訪ねた宰相(葵の上の兄)別れの時の歌🌊 〜頼りない雲居(宮中)で、 わたしは独りで泣いています。 かつて共に翼を並べた君を恋い慕いながら 【第12帖 須磨 すま】 「これは形見だと思っていただきたい」 宰相も名高い品になっている笛を一つ置いて行った。 人目に立って問題になるようなことは 双方でしなかったのである。 上って来た日に帰りを急ぎ立てられる気がして、 宰相は顧みばかりしながら座を立って行くのを、 見送るために続いて立った源氏は悲しそうであった。 「いつまたお逢いすることができるでしょう。 この…