僧堂修行中、おいしいものを食べたいとか、ゆっくり寝たいとか、制限された生活で湧き起こる願望はほとんどなかった。足りないものは、ほぼなかった。なければないように生きていけることがよくわかった。そんな私が唯一、修行を終えたらかなえたいと思ったのが、一日じゅう机の前に座って、興味の向くまま書物を広げて探究することだった。すなわち道元禅師の書かれた「正法眼蔵」であり、原始仏教の経典群、大乗経典群であり、インド哲学にかんするあれやこれやである。いま、その願いがかなって、オンライン講座の資料づくりも含め、毎日朝から晩まで本を広げていられることが、とてもありがたく幸せだ。難しい内容に脳が機能しなくなったり、…