『婦人公論』昭和55年1月号に立川市に住む主婦の手記が発表されて物議を醸した。「千石イエスよ、わが娘を返せ」と題されたもので、新興宗教に娘を奪われて帰ってこないという母親の悲痛な叫びだった。 ほどなくして産経新聞がその母親を取材し、あらためて話を聞いた。 「イエスの方舟」なる集団が聖書研究を口実に人々を誘い込み、囚われているのは10人以上、その多くが20~30歳代の若い女性たちだという。主宰者は千石と呼ばれる中年男で、元々は空き地にバラックやテントを張って寝泊まりしながら、布教のような活動を行っていた。女性たちはいつしか元の生活をおざなりにして活動を共にするようになった。だが家族らが妻や娘の奪…