都心から西に向かう列車に乗った。都心から西に向かう列車とは私鉄以外は東海道線か東海道新幹線か中央線しかない。山梨に住む自分が乗るのは中央線だった。 西日が傾く。それを追うように西に向かう。しかしそれなりの速度で走っていても落ちる太陽に追いつくことは決して出来ない。少しづつ暗くなる。ビルばかりだと思っていた中央線沿いの車窓も気づけばそれは駅の周辺だけで駅間は思ったよりも建物の背が低い。それはそうだ。この辺りは武蔵野なのだから。国木田独歩が歩いたのもこのあたりか。太宰治が愛人とともに自らの終焉の地としてこの辺りを選んだのもたぶん昔ならばわかるように思う。のどかで美しく素朴な田園風景があったことだろ…