二、黒田『社会の弁証法』の再検討 せっかく早瀬自身が参照を指示してくれているのだから、黒田『社会の弁証法』を紐解いてみよう。該当箇所たる114節では、国家の本質論的な把握を踏まえて「国家意志」の歴史的諸形態が論じられ、前近代の絶対主義国家から近代ブルジョア国家、そして過渡期の労働者国家についての比較的長い注記が付け加えられている。この本文・注記は以前のヴァージョンである『社会観の探究』(初版1956年)から基本的に変更されていないが、早瀬が言及している——卑怯にも、文を引用はしていない——のは、1994年新版において新しく書き下ろされた「**」部分である。そこで黒田は次のように述べている。 「…