Das Kapital*1
マルクスの主著。共産主義経済理論とか言われることもあるが、中身は資本主義社会の詳細な分析であって、別に社会主義・共産主義下での経済理論が書かれているわけではない。
全3巻からなるが、マルクス本人は第一巻の刊行後に亡くなっており、第二巻と第三巻はエンゲルスによって刊行された*2。共産主義にとってのバイブル*3。
マルクスは、唯物史観によって、資本主義社会が必然的に社会主義へ転化することを明らかにしたが、これを論証するため、その半生を費やして資本主義経済の分析を行った。マルクスはまず、資本主義生産の特徴である商品の分析を行い、資本家が獲得する利潤は、労働者が生み出した剰余価値であり、ゆえに資本家は搾取階級であると説く。労働者は貧困化し、階級闘争が高まり、資本主義は必然的に崩壊すると述べている。
作家の高橋源一郎は『文学王』の中で『資本論』の冒頭を引き、次のように述べている。
カッコイイ。作品の冒頭はこうでなくちゃ。わたしが、最初の一行にばかり力をいれるのはこの本を読んだせいだろう。それから、この本は、じつは犯人探しのミステリー構成になっているのである。ただし、犯人は最初の一行でわかっている。「商品」なのだ。で、コロンボ刑事ことマルクス氏は、犯人を一歩ずつ追い込んでいく。そのロジックとサスペンス。そして、ついに、コロンボ・マルクス刑事の前で、自ら犯人であることを自白してしまう(第二篇第四章第三節)。そういうわけで、『資本論』はわたしの理想の「小説」の一つなのである。
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