クラシック小説

第12章 サルバドール号の捜索 サルバドール号の広々とした前甲板で、緊迫した話し合いが持たれていた。 「今どのくらいのスピードで進んでいるんだ？」 スティーブが尋ねると、マデリンが船長から聞いた情報を伝えた。 「船長の話では時速15マイルくらいだそうよ。これが最高速だって」 「イギリスのヨットとしては十分な速度ですよ」 クレル船長は誇らしげにそう付け加えた。 「確かにイギリスのヨットとしてはね」 カンバーフォード氏も同意を示す。 「ということは」 スティーブは状況を整理し始めた。 「私たちの速度はエアクラフトの3分の1。出発も2時間遅れている」 彼は慎重に計算を説明していく。 「もし彼女たちが…

第10章 マデリン・デントリーの提案 航空ショーの会場では、ケイン水上飛行機に乗り込んだ2人の少女の飛び立つ姿を、観客たちが熱い視線で見送っていた。フライング・ガールの異名を持つオリッサの腕前は誰もが認めるところで、事故を起こしたこともなかった。確かに海上飛行にはそれなりのリスクがあったが、万が一のために下に小型ボートを搭載しているため、危険性は最小限に抑えられていた。観客のほとんどは、2人が無事に戻ってくることを疑っていなかった。何百もの双眼鏡が空を追いかける中、主催者側は観客を楽しませるために他のパイロットたちも飛ばしたが、みんなの関心は遠くに消えていく小さな点―フライング・ガールの姿に釘…

第六章 漂流者たち 「あら、まあ！」オリッサは体を起こして驚きの声を上げた。少しして、眠そうな声でシビルが答える。「どうぞ続けて。でも、もし溺れ死んでたりしたら、優しく教えてね」「なんて不思議なの...」オリッサは固まったように見つめ続けていた。シビルはもぞもぞと毛布を払いのけ、同じように起き上がった。「秘密にしとくつもり？だったら...うわぁ！」夜の間に、大きな翼を広げた飛行艇は、小さな入り江にゆっくりと流れ着いていた。水面は池のように穏やかで、両側には黒々とした岩の突端が入り江を縁取っている。その間に浮かぶ島は、緑のかけらもない岩の集まりだった。海岸線には滑らかできれいな砂浜が広がり、その…

第4章 アルミの箱 オリッサは、アザラシ島が見た目よりもずっと遠いことを理解していました。そのため、海岸を離れるとき、まず数マイルほど真西に向かうことにしました。その後、南に方向を変えて島を目指すという計画です。これは航路としては少し遠回りになりますが、海岸線と平行に飛ぶ区間があるため、地上の観客にとってはより印象的な飛行になるはずでした。帰りは島から一直線に戻ってくる予定を立てていました。島とほぼ同じ距離まで沖に出たと判断したとき、オリッサは方向転換を試みました。ほんの少し円を描くような感じで曲がるだけのはずでした。しかし、スティーブの警告があったにもかかわらず、操縦装置の固さにオリッサは驚…

第2章 空飛ぶ少女 オリッサ・ケインがサンディエゴに到着した翌朝のこと。 それは航空ショーの前の土曜日だった。彼女は兄のスティーブと一緒に、太平洋を見下ろす小高い崖にあるハンガーへと向かった。 そこはグレン・カーティス航空キャンプの近くにあり、二人は午前中いっぱいを新しい水陸両用機の入念な点検に費やした。マデリン・デントリーに話したように、「空飛ぶ少女」は決して無謀な冒険はしない。彼女の華々しい飛行の成功の秘密は、機体のあらゆる部分を完璧に理解していることにあった。それぞれのボルトやブレースが何のためにあり、どれだけの負荷に耐えられるのか。翼が空気から受ける抵抗がどれくらいなのか。あらゆる状況…

第1章 ヨットを持つ少女(後編) 駅では大勢の人々が待っていました。しかし、彼らは大金持ちのマデライン・デントリーを見るためではなく、その名を誰もが知る「空飛ぶ少女」を一目見ようと集まっていたのです。彼女の驚くべきパイロットとしての技術は、航空スポーツに興味を持つ全ての人々の賞賛を集めていました。広告板には、来たる航空ショーの目玉として「空飛ぶ少女」を宣伝する派手なポスターが貼られ、彼女の到着を知った多くの好奇心旺盛な市民たちが駅に集まっていました。まず最初に、わずかに足を引きずる背の高い、端正な顔立ちの青年が飛び出してきて、オリッサを抱きしめてキスをしました。これがスティーブン・ケイン、飛行…

第1章 ヨットを持つ少女(前編) 豪華列車のパーラーカーと呼ばれる車両は、実は「応接室」という名前とはかけ離れた代物でした。中央に2列の回転椅子が並んでいるだけの、ごく普通の客車なのです。しかも、本来は自由に回転するはずのその椅子も、ポーターが周りに積み上げる手荷物のせいで、ほとんど動かすことができません。結局のところ、乗客は足を置くスペースさえままならない状態で旅をすることになり、この「特別車両」に追加料金を払う価値があるのかと疑問に思ってしまいます。とはいえ、カリフォルニア南部のサンディエゴへ向かう場合、選択肢は普通車両かパーラーカーしかありません。そして2月のある穏やかな晴れた朝、ロサン…