子どものころの記憶って、スノードームに似ている。ある日のある場面、ある場所、ある人。前後の脈略や時間軸、背景なんかが全部ぶっとんで、ただ、その一瞬だけが思い出される。まるでガラス玉のなかに閉じ込められているかのように。ブローティガンの小説『風に吹きはらわれてしまわないように』は、そうした少年時代の記憶の断片を並べている。彼の並べ立てた記憶たちは、どれもこれも「謎」だらけだ。なぜ、あんなことをしたんだろう?なぜ、あの夫婦は家具をいちいち湖畔に並べて釣りをしていたんだろう?なぜ、あの老人はあんなところで一人で暮らしていたんだろう?なぜ、デイビットは根暗の僕と遊んでくれたんだろう?なぜ? なぜ? な…