2020年にフランス語で刊行されたタチアナ・ド・ロネによる小説『Flowers of Darkness』は、近未来のパリを舞台にしたサスペンスである。過去作『サラの鍵』で世界的成功を収め、映画化されたことでも知られる著者が、本作ではこれまでの歴史ノンフィクションや現代の人間ドラマとは一線を画する作品に挑んでいる。
2024年7月に刊行されたベン・シャタックの短編集『The History of Sound』は、三世紀にわたりアメリカ北東部ニューイングランド地方を舞台とする十二篇から成る連作短編集である。各作品は互いにゆるやかに結びついており、歴史や記憶がどのようにして思いがけないかたちで現代に甦るのかを描き出している。
2022年にフランスで刊行されたニコラ・マチューの小説『Connemara』(コネマラ)は、ゴンクール賞受賞作『Leurs enfants après eux』(英題 Their Children After Them、彼らに続く子どもたち)に続く待望の作品である。
2024年3月に刊行されたテッサ・ハルズによるグラフィック・メモワール『Feeding Ghosts』は、三世代にわたる女性たち——祖母・孫怡(スン・イー)、母・ローズ、そして著者自身——の人生を、中国近現代史の激動と重ね合わせた作品である。2025年には回想録・自伝部門でピュリッツァー賞を受賞するなど、すでに多くの賞を受賞し高く評価されている。
2025年5月に刊行されたベトナム系アメリカ人作家、オーシャン・ヴオンによる長篇小説の第二弾『The Emperor of Gladness』は、かつて産業で発展したものの今は衰退した、コネチカット州イーストグラッドネスという架空の街を舞台に、社会の周縁で生きる人々の困難と、その中に見出される人との繋がりと優しさを描いた作品である。本書は出版直後にオプラ・ウィンフリーのブッククラブで選書され、全米の読書家からの注目を集めている。
2020年6月に刊行されたファン・ソギョン著『鉄道員三代』(原題 철도원 삼대,英題Mater 2-10)は、韓国を代表する作家による壮大な年代記である。本作はその後英訳され、2024年の国際ブッカー賞にショートリスト入りしたことで、改めてその文学的価値に注目が集まった。一見謎めいた英語タイトルは、日本植民地時代に使用された機関車の名称「Mater 2-10」に由来する。この機関車は錆びてボロボロになっているが、現在は国家登録文化財として保存されている。
2023年に刊行された『قناع بلون السماء』(英題 A Mask, the Colour of the Sky、日本語意訳「空色の仮面」)はパレスチナ人作家バセム・ハンダクジ(Bassem Khandakji)による小説である。彼は2004年以来、イスラエルの刑務所に収監されており、獄中から作品を発表している。本作は、2024年の国際アラビア語フィクション賞(IPAF、通称アラビア語ブッカー賞)を受賞したことで、世界的な注目を集めている。
2025年1月に発売されたサナム・マフルジのデビュー小説『The Persians』は、イラン革命によって故国イランと移住先のアメリカでそれぞれの人生を歩むことになったヴァリヤト家の5人の女性たちの物語である。かつては名門で人脈に恵まれていた一家が、1979年のイラン・イスラム革命によって運命を大きく変えられ、家族は世界中に散り散りとなる。革命は全てのイラン人のアイデンティティや生活に深く影を落としている。
2024年8月に刊行されたゲイル・ジョーンズによる小説『The Unicorn Woman』は、第二次世界大戦後のアメリカ南部を舞台に、アフリカ系アメリカ人の帰還兵という主人公の目を通して、当時の社会の現実と個人的な体験が織り交ぜられながら描かれる。
2024年3月に刊行されたステーシー・レヴィンの小説『Mice 1961』は、2025年ピューリッツァー賞こそ逃したものの、最終選考に残った作品として文学界で注目を集めている作品である。この小説は、タイトルが示唆する齧歯類についての物語ではなく、冷戦時代のフロリダ南部、特に1961年のキューバ危機直前の緊張が頂点に達していた時期を舞台に、二人の若い姉妹と住み込みの家政婦ガートルの一日を描いたものである。