ジャン=ジャック・アノー監督の『スターリングラード』(Enemy at the Gates)は、史実をベースにした戦争映画でありながら、私にはどこか恋愛映画としての余韻が強く残った。 この映画には、戦争の現実、恋愛の詩情、英雄神話の虚構、心理劇の緊張、そして娯楽映画としての緻密な構成、それらがひとつに押し込まれたような複雑な構造がある。だからこそ、観る者によってまったく違う印象を残す、不思議な作品でもある。 主人公のヴァシリ・ザイツェフ(ジュード・ロウ)と女性兵士ターニャ(レイチェル・ワイズ)の関係は、単なる添え物的なロマンスではない。戦争という極限状況のなかでの恋愛感情は、「生き残ること」の…