■『オリヴィエ・べカイユの死・呪われた家:ゾラ傑作短編集』(国分俊宏訳、光文社古典新訳文庫、2015)を読む。 ‥‥僕が子どもの頃からひたすら恐れていたのは、虚無だった。僕は、自分の存在が消えてしまうということが、さっきまで自分だったものが突然に消えてなくなるという事が想像できなかったのだ。しかもそれが永遠に続くのだ。何世紀も何世紀も、もう決して僕という存在が復活することなく。時々、新聞記事の中に次の世紀の、未来の日付などを見つけたりすると、僕は震えたものだ。この日付が訪れるとき、僕はもう確実に生きてはいないだろうと思うからだ。そして、僕が見ることもない、生きることもない、未来のその年が、僕を…