作中印象的なのは「誰かと比べて劣る自分」 憐憫の情はかけられない。不相応だけど成立するなんてこともない。主演と比べられる自分、ミューズと比べられる自分。同性異性関係なく、「その筋」において不足する自分。ここに、全てに共通する一つの答えが投げ込まれる。主演の代役を叩き込まれている尾上が受けたセリフだ。紹介しよう。 〈「お前は藤谷ほど動きの語彙力があるのか」〉〈「だからお前は根性がないんだ。何でもすぐにわかった気になって目を逸らしてしまうから、語彙が増えない。お前の寡黙な踊りは誰にも何も伝えない」〉 ドキッとする。端的に言えば「考えなし」 言い切ってしまうのはラクなのだ。その先を考えなくて済むから…