福田の「政治=九十九匹」は、従来の「政治と文学」における「政治=マルクス主義」からすでに転換している。「ぼくがこの数年間たえず感じてきた脅威は、ミリタリズムそのものでもなければナショナリズムそのものでもなかった――それはそれらの背後にひそむ個人抹殺の暴力であり、その意味においてボルシェヴィズムにも通ずるものであった。〔・・・〕ぼくのわずかになしえたことといえば、ロレンスの『黙示録論』を訳すことにすぎなかった」。 それは左右を問わない「政治」的集団や組織を指していた。六年後(一九五三年)のスターリン死去の年、伊藤整によって「組織と人間」として定式化される問題である。コミュニズムの社会であろうと資…