4「新版への訳者後記」について考える 『日本の弓術』の訳者・柴田治三郎氏(1909年生)は、同著(単行本初版一九四一年)が文庫化されるにあたり、1982年4月に記した「新版への訳者後記」で、『弓と禅』の原稿について、次のように述べています(『日本の弓術』の原稿を「初稿」と記し、『弓と禅』の原稿を「決定版」と記している)。 新版への訳者後記 …決定版が小町谷先生に送られて来た時、先生はそれを私のところへ持ちこんで、翻訳しないかと言われた。私はそれを一読して、初稿に接した時に覚えた驚きと、ほとんど感動ともいうべきものとは、違った印象を受け、これは禅をまったく知らず哲学にも疎い自分には理解の及ばない…