1996年10月25日、日本の音楽シーンに一枚のアルバムが投下された。フィッシュマンズの5thアルバム『LONG SEASON』。約35分間、一曲として構成されたこの作品は、発売から30年近くが経過した現在においても、聴く者を戸惑わせ、魅了し続けている。 このアルバムを理解するには、まず「これは音楽作品である以前に、ひとつの体験である」ということを認識する必要がある。通常、私たちは音楽を「聴く」が、『ロングシーズン』は「泳ぐ」ものだ。佐藤伸治の浮遊するようなボーカル、柏原譲のミニマルなベースライン、茂木欣一の繊細なドラムワーク、そしてZAKが織りなすダブ処理とアンビエント的な音響空間。これらが…