何十年ぶりかで再読。若い人にはほぼ無視されてる作家ですが、短編ながら中身の濃さでは凡百の作家、足下にも及ばずであります。重厚長大でなく、重厚短小で印象深い作品です。「山月記」はながらく教科書にも使われたそうだから「そう、人が虎になってしまって嘆く話ね」と思い出す方もおられるでせう。おさめられてるのは「山月記」「名人伝」「弟子」「李陵」の四作です。 「名人伝」はたった10ページの小品です。邯鄲の都に住む男が天下一の弓の名人になろうと志を立てた。で、当代随一といわれる名人に入門した。最初の訓練を瞬きをしないこと。見えない一瞬が狙いを外してしまうからだ。何分も何時間も何日もカッと目を開いたまま過ごす…