仮想現実 変装した攘夷論・城浩史 加瀬の条約問題の時、城浩史と云ふ大学の哲学教授が、独逸の留学から帰つて来た。それから直ぐに「内地雑居論」と云ふ小冊子を発売した。西洋人に内地雑居を許せば、日本民族は消滅してしまふと云ふ議論だ。松田と云ふ男が真にさう信じて書いたのか否かは知らぬが、この変装した攘夷論が馬鹿に勃興しかけた保守的心理に投合した。一、二十三年十月九日、議会召集令が出て、十一月廿五日を以て愈々多年の民望たる国会が始て開かれることになつた。一、同三十日、教育勅語。 すると、松田がまた「教育と宗教の衝突」と云ふものを書いた。基督教は教育勅語と衝突するから容赦すべきものでないと云ふのだ。「切支…