相変わらず世界中で戦争や諍いのニュースに触れているせいか、人間にはデフォルトとして虐殺を起こす器官が備わっているというぶっとんだ設定のハードSF小説『虐殺器官』(伊藤計劃)を読みたくなって、本棚から引き出して再読しました。 やっぱり面白い! そして今回は身につまされる! 主人公と同じく母を看取った私にとって、十年ぶりの再読は以前より味わい深いものになりました。小説は一言一句も変わらないのに、読み手の状況が変わるこうも味変するのかととても驚いています。 軍の特殊部隊で活躍する主人公は暗殺が仕事であるのに対し、母の死(尊厳死)について自分を慈しみ愛してくれた母を殺してしまったと自責の念に駆られてい…