「確かにその車の主が知りたいものだ」 もしかすれば それは頭中将が 忘られないように話した 常夏《とこなつ》の歌の女ではないかと思った源氏の、 も少しよく探りたいらしい顔色を見た惟光《これみつ》は、 「われわれ仲間の恋と見せかけておきまして、 実はその上に御主人のいらっしゃることも こちらは承知しているのですが、 女房相手の安価な恋の奴《やっこ》になりすましております。 向こうでは上手に隠せていると思いまして 私が訪ねて行ってる時などに、 女の童《わらわ》などがうっかり言葉をすべらしたりいたしますと、 いろいろに言い紛らしまして、 自分たちだけだというふうを作ろうといたします」 と言って笑った…