交戦一年を経たあたりから、帝政ドイツの外交態度は新傾向を帯びてきた。 講和への熱烈な欲求である。 ベルギー、ロシアは元よりとして、大日本帝国に対してまでも単独講和の打診があった。むろん、悉くを撥ねつけられた、実のならぬ花に過ぎないが、あったことはあったのだ。 戦争は勝っている間に畳むに限る。フリードリヒ大王やビスマルクを生み出した、恐るべきドイツ民族がその程度の要領を掴んでいない筈がない。彼らは実に常識的な、真っ当な手を打ったろう。 ただ、問題は、同じ理屈を英仏以下の、連合諸国の人々もごく当然に呑み込んでいたという点だ。 (フランスの列車砲) 「戦争は勝ってる内に終わらせるに限る」なら、裏を返…