宝永4年6月7日。近頃、雲州様(松平義昌)賄志水茂右衛門の19になる子が借家の婆を切る。本重町あたりの町屋でのことであった。かつてこのあたりには化け物が出るという噂があった。この時茂右衛門は江戸に行って留守であった。この子は夕方雪隠にいた。近頃あちこちで痢病(赤痢)が流行り、家々では困っていた。表借屋の婆が厠へ行こうとすると人が入っていた。大屋の厠へ行くとこの子が入っていた。婆は腹痛に耐え兼ね、突然厠の中をのぞき、急いで代わって厠に入ろうとした。その様は髪はぼさぼさ、憔悴し、大きくうめき声を上げ、あたかも化物のようであった。子はとても驚いて誰だと声をかけたが、婆は耳が遠く、聞こえなかったので答…