680段 法華経を礼拝した猿、人間に転生して写経を完成させた事 越後国の乙寺という寺に法華経の読誦を専門とする僧が住んでいた。朝に夕にお経を読んでいたが、二匹の猿がやって来て、やがて僧の読誦を聞くようになった。猿が来るようになって2、3日経った頃、僧は試しに猿にこう聞いてみた。「お前たちは何故毎日ここに来るのかね。もしかして、私の読む法華経を写経したいと思っているのか?」すると二匹の猿は掌を合わせて僧の足元にひれ伏した。何とこの作法は仏教における最敬礼ではないか。僧は大変感動し、また不思議にも思った。それから5、6日経って、今度は数百の猿が集まってきた。どの猿もみな紙の原料となる楮(コウゾ)の…