576段 高倉宰相茂通と栄性法眼と交友・放逸の事 後嵯峨院の院政時。年来の親友だった宰相藤原(高倉)茂通と栄性法眼は後嵯峨院の住む亀山殿で仲良く宿直し、互いに誘い合っては親しく交遊する仲だった。ある時、茂通卿が栄性法眼の邸を訪ねたことがあったが、もとどりは丸見えで小袖姿(今でいうパンツ一枚状態)の変態姿で、「栄性法眼、おやまけおやまけ(このスケベ野郎の意)」と大はしゃぎで門から縁へ上がりこんだのだ。栄性法眼も邸の中から即座に、「茂通めも、おやまけおやまけ(ろくでなしめの意)」と言い返す。「スケベ野郎の栄性いるかい」「なんだろくでなしの茂通か、まあ上がれや」くらいの軽口か。親友同士ならではのきつ…