ネエさんの店の応接間の床(とこ)には、赤色をした、頭の後ろが大きな瘤のように隆起している牛の形をした土器が黒い敷板の上に置かれ、床(とこ)の隅には、胴部に円いスタンプ状の彫り込み文様のある、ほどよい高さの石製の筒瓶があり、そこに女郎花などの草花が生けてあった。先ほどまで内科の先生が腰かけていたところに僕は座り、ネエさんは新しく入れ替えたアイスティーを僕の前に置いた。先生はあの後すぐに用事があると帰っていったので、自然とネエさんと二人でお茶を飲むことになったのである。 「優しそうな方ですね」僕が、先生の目尻の垂れた笑顔を浮かべそう言うと、ネエさんは「何でも興味があって、いろいろ持ってるのよ。一度…