ベルトルッチの名声を一躍高め、映画史上に残るマスターピースとして評価される作品だが、中身の濃いモラヴィアの小説に較べると、内容は随分と物足らなく感じる。登場人物の掘り下げ方が浅く、全くもって空虚で薄っぺらいのだ。構図、陰影、色彩にこだわったショットはたしかに素晴らしいものの、肝心のストーリーをこうまで骨抜きにされては映像美を称賛する気すら失せてしまう。様々なエピソードの背景となる描写がことごとく不足しており、その意味するところが判然とせず、単にあらすじを追ったダイジェストを見せられているかのようで退屈極まりない 主人公マルチェッロと、彼の内奥に容易には払拭出来ぬ「罪」の烙印を刻み込むリーノが再…