大極殿の御輿《みこし》の寄せてある神々しい所に御歌があった。 身こそかく しめの外《ほか》なれ そのかみの 心のうちを 忘れしもせず と言うのである。 返事を差し上げないこともおそれおおいことであると思われて、 斎宮の女御は苦しく思いながら、 昔のその日の儀式に用いられた簪《かんざし》の端を少し折って、 それに書いた。 しめのうちは 昔にあらぬ ここちして 神代のことも今ぞ恋しき 藍《あい》色の唐紙に包んでお上げしたのであった。 院はこれを限りもなく身に沁《し》んで御覧になった。 このことで御位《みくらい》も取り返したく思召した。 源氏をも恨めしく思召されたに違いない。 かつて源氏に不合理な厳…