訓読 >>> 884国(くに)遠き道の長手(ながて)をおほほしく今日(けふ)や過ぎなむ言(こと)どひもなく 885朝露(あさつゆ)の消(け)やすき我(あ)が身(み)他国(ひとくに)に過ぎかてぬかも親の目を欲(ほ)り 要旨 >>> 〈884〉故郷から遠い旅路にあって、恨めしくも今日この命を終えなければならないのか、親たちにお別れを告げることもなく。 〈885〉朝露のようにはかない我が命だけれど、このような他国では死ぬに死にきれない。親に一目会いたい。 鑑賞 >>> 臨終の大伴熊凝(おほとものくまごり)の気持ちを、麻田陽春(あさだのやす)が代作した歌。肥後(熊本)から旅立った熊凝は、都へ向かう道半…