仏《ほとけ》も昔は凡夫なり 我等も遂には仏なり。 何《いず》れも仏性《ぶっしょう》具《ぐ》せる身を 隔《へだ》つるのみこそ悲しけれ。 俗謡《ぞくよう》に事よせて、切々と歌い続ける妓王の姿は、 並みいる人の涙をそそるものがあった。 清盛も少しは気の毒に思ったらしく、 ねぎらいの言葉を与えて家へ帰した。 我が家に帰りつくと妓王は又さめざめと涙を流しながら、 こんな生き恥をさらしているより死んだ方がよっぽど良いと 母の膝によりすがって、かき口説《くど》く。 妹の妓女も、姉が死ぬならと、暗に、自殺をほのめかす。 年老いた母一人が、おろおろしながら、二人の短慮を戒めて、 もう一度考え直させようとする。 …