壮年になってから、自分の発言、行動に正当性があるか、何か欠陥があるかもしれないと徐々に不安が募るようになった。「これが正義だ」と自分の主張を一方的に押し付ける増上慢に陥ってはいないかと、そいう煩悶だった。 はるか昔に父親に言われた言葉が蘇った。「話し上手は聞き上手」、自分が話すより人に聞く時間を長くし大切にすること。ああこの人は立派だなと思う「大人」は、よく耳を使う人だと気が付いた。そういう賢人に学ぶことだ。 私が学ぶ対象の賢人として内田樹、山極壽一の両氏の名を挙げたい。内田氏は、――大人としての知性はどうしたら身につきますか、の問いに、「もののわかった大人をメンターとして私淑することでしょう…