哲学者のカントは規則正しい人だった。夏も冬も毎朝4時55分に起きる。講義などを終えると、きっちり午後3時半には散歩へ出かける。同じ道のりを歩くので、街の人はカントを見て時計の針を正した、という逸話があるほどだ ▼きのうは生誕300年。難解な著作のうち『永遠平和のために』(中山元訳)だけは読み通した。書かれているのは悲観的な人間像だ。「戦争はあたかも人間の本性に接ぎ木されたかのようである」。放っておけば戦争になる。だから止める手立てを、と説く ▼駆け足で言えば、その手立てとは、国民が主権をもつ国々による連合だというのがカントの答えだろう。戦争を選んで兵士として戦うのか、巨額の費用を負うのか。当事…