欠点の多い娘でも死んだあとでの親の悲しみは どれほど深いものかしれない、 まして母君のお失いになったのは、 貴女《きじょ》として 完全に近いほどの姫君なのであるから、 このお歎きは至極道理なことと申さねばならない。 ただ姫君が一人であるということも 寂しくお思いになった宮であったから、 その唯一の姫君をお失いになったお心は、 袖の上に置いた玉の砕けたよりももっと 惜しく残念なこと でおありになったに違いない。 源氏は二条の院へさえもまったく行かないのである。 専念に仏勤めをして暮らしているのであった。 恋人たちの所へ手紙だけは送っていた。 六条の御息所《みやすどころ》は 左衛門《さえもん》の庁…