ホモサピエンス全史とか、出口治明の歴史やマクニールの業績とか、世界史眺望ものは豊穣の季節を迎えている。 それに引き換え、気の毒としか言えないのが、科学技術史関係の参考書の不毛であろう。おそらくは山本義隆一人が気を吐いている。それも物理学史に限定されたものだ。 20世紀末までは、もそっと幅の広い科学技術史の本が手軽にアクセスできた。 ダンネマンやバナール、ニーダム、ブロノフスキなどのパワフルな書籍が新刊本屋で踵を接して並んでいた時代があった。文庫本にすら読み応えのあるシュテーリヒの『西洋科学史 全五巻』があった。 とりわけ、自分が慨嘆したいのが技術史分野の書籍不毛だ。早い話、21世紀における情報…