駒子以外にもう一人、重要な女性がいる。トンネルを抜ける列車で、偶然島村と同じ車両に乗り合せていた葉子だ。澄んだ眼と、「悲しいほど美しい声」の持主と表現される、こちらは掛値なしの美少女である。 映画では、岸恵子の駒子に対して、葉子は八千草薫。岩下志麻の駒子に対して、葉子は加賀まりこ。まぁ、凄い顔ぶれだ。 行動的で、過去など振捨てて生きてゆく駒子に対して、葉子は将来が心配になるほど控えめで、土地に縛られ、人に縛られて生きる女性だ。 踊りと音曲の師匠の息子は、かつて駒子の許婚と目された男だったが、病死した。当の師匠も、かねてより中風病みだったが、息子の後を追うように死んだ。葉子は病人のそばに最期まで…