入学して間もない都立高校の廊下で、山田太郎は歩くのをやめる。前を行く長身の後ろ姿に見覚えがあった。その隣に並んでいる小柄なほうと合わせて、ようやく思い当たる。 中学の硬式野球で、この二人には手も足も出なかった。打席では詰まらされ、守っていても流れを渡したまま試合が終わった。あれで区切りをつけるつもりで、山田は野球部のない小手指高校を選んだ。名門からの誘いを山ほど受けていたはずの清峰葉流火と要圭が、その高校の廊下にいる理由が分からない。 もっと分からないのは、要の反応のほうだった。かつて「智将」と呼ばれ、打者の考えを先回りするような配球を組み立てていた捕手が、こちらの顔を見ても何も浮かべない。そ…