白川静の『桂東雑記 II』を読んで、身体動作が思考の奥深いところに影響を与えていることを確信した。特に、彼が語る「写すこと」が言語理解につながるという話は興味深い。白川は、若い頃に日記をつけていたが、余白ができたときには漢文を書き写して埋めていたという。そして、繰り返し写しているうちに漢文の文法や語法が自然と理解できるようになったと述べている。 ここで重要なのは、書き写すという身体行為が単なる模倣にとどまらず、思考の整理や理解の深化を促すという点だ。流し読みするだけでは頭に入らないものが、実際に書き写すことで、語と語の関係性が身体を通じて染み込んでいく。白川は「写すことが思考を組織する第一段階…