鶴田村(花輪町)の辺になみだ河といふめるは、あはぬ夜毎/\を根み、ながるゝなみだの顔をあらひたるより川の名におへりとも、又いつまで世にすみありつとも、あがおもふ女を見ることこそかたからめとや思ひけん、深き林に入て此男くびれ死けり。 又、その川に身をなげたるゆへ、なみだ川といふともいへり。 女も、ただ比男をのみ恋ひ、おもひやみて身はやせ、いたはり重く湯水のまれず、つゐに身まかりぬ。 翁うちおどろきふしまろびて、かくばかりおもひふかく、せちに契しなかと夢にもしりせば、あはせてんにとてくひなげけどいふかひなく、せんすべもなければ、親どもなく/\、男も女もひとつ塚の中に、男の立つる千束の錦木とともにこ…