「近代的自我」という言葉がある。 開国、明治維新以来、人々が身分や主従関係から解放され、一人ひとりが自由を手にすることができた。それなりの自由かもしれないが、江戸時代と全く違う社会になった。早くに西洋に留学し、文学や人文・社会科学を学ぶ機会があった者は、先駆けて西洋の個人主義を知らしめた。 そもそも封建的なしがらみから離れて資本主義は可能になり国の発展もある。危機意識から出発した明治時代にあって、国も民衆も主義も思想も無く西洋の文明を受け入れた。 知識層が育ち、個人主義が当然のものになり、近代的自我、孤独な自我、が広がった。 孤独というのはどの時代に、どの地域にもあるもので、仲間はずれとか、村…