イリヤ・プリゴジンが提唱し、1977年のノーベル化学賞を受賞した理論。平衡状態でない開放系では、エネルギーが散逸していく流れの中で、自己組織化によって定常的な構造が生まれることを示した。
味噌汁が冷えていくときの模様や、太陽の表面で起こっているベナール対流の様相、うろこ雲など、自然界には散逸構造が多く見られる。
山口裕之『ひとは生命をどのように理解してきたか』(36) 今回は、第4章 機械としての生命 第4節 さまざまな力学系モデル(p.192~)である。 本節では、生命現象の「力学系モデル」として論じられてきた様々な古典的な理論の概略が説明されている。 シュレーディンガーの熱力学的考察 生命の力学系モデルは、シュレーディンガーの『生命とは何か』に由来する。 通常の物質は秩序だった構造を与えても急速に無秩序状態(熱力学的平衡状態あるいはエントロピー最大の状態)に陥ってしまう。平衡状態に陥った物質は、もはやその状態から変化しない。 生物とは、熱力学的な非平衡状態が、異常なまでに長期間維持されている系であ…
エネルギーから見たサピエンス全史 エネルギーをめぐる旅――文明の歴史と私たちの未来 作者:古舘恒介 英治出版 Amazon 「エネルギー」版のサピエンス全史。「エネルギー」を軸におくことで、リアリティが高まり、かつ知らなかった内容も多いので、サピエンス全史よりも聴きごたえがあった。 エネルギー革命の歴史、エントロピー理論、散逸構造(これは面白い)、地球温暖化と取り上げるテーマは多い。 また、著者は日本石油ーJXのサラリーマンで仕事のかたわらこれだけの本を書かれたことには敬服。 へーっと思うような歴史や科学上の事実が多く、目から鱗。ただし、こうやってレビューを書こうとすると、聴いたものは意外に頭…
要素が多数集まると、その集合体の外表面が相を成す。 例えば、水分子が集まると、液体としての水・固体としての氷ができる。 相の性質は、特に相転移の挙動を、水の場合は氷・水・水蒸気の態様の変化を、要素の性質から推し量るのはかなり難しい。 相がまた要素となり、新たな高次元の相を成す。相同士が入れ子になる事も珍しくない。 要素が人間ともなると、要素と相とが、複雑な相互作用を行う。 人間が認知している領域では、時間的・空間的に、要素と相の関係が常にある。世界が離散的なのか、要素と相の関係をして離散的と呼ぶのかは、とりあえず横へおくとして、決して連続していない。 相=形態形成は、およそ比喩の場合も含めてエ…
図書館で見かけて、それともある日の返却本だったかなぁ? 若い読者に贈る美しい生物学講義――感動する生命のはなし 作者:更科 功 ダイヤモンド社 Amazon 出版社の記事:若い読者に贈る美しい生物学講義 | 書籍 | ダイヤモンド社 著者(wikipedia:更科功)の考えでは、いくら巨大化して(自然)wikipedia:科学を物理・化学・生物学などの分野に分けたとしても、科学は一つ、だそうだ。 ググったらヒットした(と思ったら、本書の紹介記事だった…):レオナルド・ダ・ヴィンチは地球を「生物」と考えた!? | 若い読者に贈る美しい生物学講義 | ダイヤモンド・オンライン ノアの洪水(wiki…
もどかしくてさわれない“life”動きや性質を抽象能力にする、そのせっかちで、真剣で、しゃべりづめの、人の集合と分離とに潜む腐敗を認める、“life”声なき声を進む、『眼の邪悪は破壊と再創造』の中へ、(死と生殖にアメーバーや、不老不死のベニクラゲを夢見る頃、)だるく、(see live shadows...)つめたく、(see live shadows...)すえた珈琲の中に、生命スープの夢想、、、打ち消す、覚える、感じる、誘い出す、、、、“life”離婚の話木を削り、塗装をし、絵を描き、それがアクセサリーになるように、ウガンダのムサ・ハサヒヤという人物は、(頭の悪いなろう小説のハーレム物のよ…
自然知能における、 ――作動原理系 と、 ――作用原理系 との区別は―― 少なくとも―― コンピュータ(computer)における、 ――システム・ソフトウェア(system software) と、 ――アプリケーション・ソフトウェア(application software) との区別ほどに明瞭にはできないであろう―― ということを、きのうの『道草日記』で述べました。 そもそも―― その区別のことを考える前提として―― 今日の自然科学は、 ――自然知能の作動原理 の内実を殆ど何も明らかにしていない―― ということを踏まえる必要があります。 この世界に自然知能は、いかにして生まれ、いかにして…
#ドネツク方面のロシア占領地域のマキエフカにある石油タンクが大爆発しました #ドネツクにある石油貯蔵所での火災に関する報告を受け取りました。 マケエフカ市チェルヴォノグヴァルデイ地区のアントロポワにある石油貯蔵所で容量70^mある2つの燃料タンクが爆発炎上しました 火災現場にはYasynovataya の複数の消防隊が送られ消防車57PSCH とモーターポンプ12PSCHも派遣されました/ウクロフォルム レニングラードでも大規模パイプライン火災がおきていましたね発電施設攻撃のお返しに #ロシアの燃料施設関連が叩かれているとも思えます 更にロシア支配下の #メリトポルでも攻撃があったようです ザ…
第二章 生物の基本形は不死 生物は非平衡状態の散逸構造である。 たとえばガスコンロの火はガスを供給し続けるなど条件を整えてやればずっと燃えている。だがガスは常に燃え続けており常に新しいものに入れ替わっていくだろう。人間も同じで、食って寝て出してをくり返し、少し時間が経てば体の細胞がすべて入れ替わっているが同じ人間(火)であることには変わりない。こういう非平衡状態(流れがある)なのに、形が変わらないものを散逸構造と呼ぶ。生と死の境界があいまいなのは、この散逸構造のためだろう。海が渦潮をまきはじめたとき、いったいどこから渦潮と呼ぶのかを指差すのはなかなか難しい。 ただ、もし部屋のなかにガスが充満し…
5-7)瞑想と自我防衛機制 5-7-5)成長へ向かう過程・根源力 5-7-6)仏教の仏性と科学の自己組織化力と私には、仏教のいう仏性とは、哲学者西田がいう、宇宙に遍満する「統一力」だと思えます。それに対して、自然科学は、それを「自己組織化力」という。それは、無秩序に向かう自然界の流れ(エントロピー増大の法則)に逆らい、「系(システム・組織)がエネルギーを取り込みながら自分を組織だて、秩序を生む力」を「自己組織化力」という。イリヤ・プリゴジンは、それを、エネルギーが散逸(エントロピーの増大)していく流れの中にあって、自己組織化のもとが発生する、定常的な構造という散逸構造として提唱しました。これは…
『エネルギーをめぐる旅』(古舘恒介著・英治出版)を読んだ。石油大手のJX石油開発で技術管理部長を務める著者が、長年、ライフワークとしてエネルギーについて研究した成果をまとめた一冊。それだけに、著者が人生賭けて書いたという気合がなみなみと伝わってくる良書だ。 内容としては、人類の誕生からのエネルギーとのかかわりの歴史を紹介しながら、気候変動問題や資源の枯渇といった問題にこれから社会がどう対処していくかを考える、といったもの。エネルギー問題は今に始まったものではなく、実は古代文明のころから森林資源の枯渇というかたちで人類が繰り返し直面してきた課題だ、というあたりはなかなか参考になる。 「エントロピ…
-「私」とは、宇宙の老化に役立つ秩序である。-宇宙の「散逸構造」理論のイメージを噛み砕いて絵本にして伝えた池谷先生の作品^ ^絵の力、何より秩序=渦の例え話の力ってすごいな〜と😊✨一般の人はこれを読んで「生きることの価値」をどう自分の中で解釈していくんだろう??そっちが気になる👀 pic.twitter.com/RqJnZ93Nho — 長岡 美幸 (@nagao22) 2022年9月9日 https://t.co/39990BV5Dqこの連載記事も好き! — 長岡 美幸 (@nagao22) 2022年9月9日 ▼池谷先生の連載記事
Moore, H.J. (1982, British Journal of Dermatology)[Does the pattern of erythema gyratum repens depend on a reaction‐diffusion system?] 理由 博論の参考文献 概要 匍行性迂回状紅斑(EGR)はGammel (1952)によって最初に記述された異常な皮膚発疹であり、その特徴は常に移動する独特の旋回する紅斑である。この症状は、実質的には根底の悪性腫瘍と常に関係があり、免疫的に調整されている(Holt & Davies, 1977)。私は、EGRがベロウソフ-ジャボチ…
youtu.be フォーカシングイリュージョン 現状を受け入れてメンタル強化 あまり不幸ではない人生 自分を客観的に見る力をつけるのが良さそう。 フォーカシングイリュージョン 動画内でも指摘有るけど、結婚すれば…と思ってるのはおかしいと。 これは、フォーカシングイリュージョンですね。 お金あれば、友達いれば、結婚すれば、趣味がアレば、 なんでもいいけど、アレがアレば幸せになれるのにというのは認知バイアス。 ちょっと古い本で、ショーン・エイカーが書いてたが、「成功したから幸福なのではなく、幸福だから成功する」ってやつと同じ理屈だと思う。 幸福優位7つの法則 仕事も人生も充実させるハーバード式最新…
(写真はフェデリコ・エンリケスの著作。エンリケスは、ピアジェの『発生的認識論序説』の第一巻の冒頭でも言及されている20世紀初頭のイタリアの数学者です。) 夜中散歩しながら色々変なこと考えてしまいますね。まあ、そんな自分だから座りが良いのかもしれないですが。以下は、そんな自分がいつもぼーっと考えてることの一部です。 【表象理論】 イメージ(≒表象)の規範的な姿、そこから逸脱したアブノーマルな姿(とはいっても規範の中にある)、果てはそんな囲いが壊れたような、天井と底がない散逸した姿について。生物の形態学とか、物理学での散逸構造ちゃんと勉強したくなる。 【政治哲学】 (一般市民とかの)規範的な生での…
山口裕之『ひとは生命をどのように理解してきたか』(37) 今回は、第4章 機械としての生命 第4節 さまざまな力学系モデル の続き(p.196~)である。 本節では、生命現象の「力学系モデル」として論じられてきた様々な古典的な理論(反応拡散系、散逸構造、セル・オートマトン)の概略が説明されているが、今回はセル・オートマトンである。(セル:細胞、オートマトン:自動機械、ロボット) フォン・ノイマンのセル・オートマトン ノイマンが研究したセル・オートマトンは、各々のセル(格子)の状態が、周囲の格子の状態によって次々に規定されていくことで、碁盤の目に様々なパターンを描いだしていくようなものであった。…
なぜ死ぬのかに関する4つの仮説(やや冗長) ヒトはなぜ死ぬ運命にあるのか (新潮選書) 作者:更科 功 新潮社 Amazon ①自然淘汰的死亡説・・・自然淘汰を繰り返すためには世代ごとの死滅が必要。ある世代の100分の1が次の世代となり99%は淘汰されるとすると死を前提にしなければ膨大な数の祖先が必要。繁殖と死がコンビになることで一定数で継代できる。 ②種の保存説・・・若い世代に道を譲るために死ぬ。 ③生命活動速度論・・・生きている間に使えるエネルギーは一定なので死ぬ。 ④進化論的寿命説・・・寿命は死亡率によって作られた。外因死の確率が高ければ若いうちに繁殖にエネルギーを集中するためその後死ぬ…
20世紀初頭の大陸哲学の流れで生まれた思想(バシュラール、ポワンカレ、ベルグソン、フッサールなど)を最近振り返ってみたいという意欲が湧いてきた。 近代から現代へと、時代も社会環境みパラダイムシフトを遂げていく過渡期で、散逸構造的に形成されたあの頃の思弁的生態系は、今日の哲学・思想研究の柱としてその存在意義は揺るがないものになっている。 そして、21世紀の今。哲学はその生態系が更に複雑化していくどころか、その独自性と学術的土壌が、「科学」の脅威に晒されているかのような状況に陥っている。往年の新規性と差別化へのエネルギッシュな意欲に満ち溢れた「哲学」はどこに行ったんだろうと思うことがある。 少なく…