1976年4月、わたしは早稲田大学教育学部英語英文学科に入学し、東京都大田区南馬込1丁目にある、老人夫婦宅の離れ6畳1Kに暮らし始めました。2023年の今から、遡ること47年前のことです。 下宿代は月15,000円。プラス電気、ガス代。仕送りは6万円なので、差し引き1週間1万円が生活のベースでした。夏休み、春休みは土木作業員(連日もろに肉体労働の土方、です。後に中上健次さんや西村賢太さんの小説に親近感を抱いたのはこの体験のせい)で稼いでも、みるみる本と飲み代にお金が消えて、少々のバイトでは追いつきません。 部屋にはテレビも冷蔵庫も、もちろん電話のような贅沢品はなく、しかし電気釜だけは生協で買い…