主演のケイト・ウィンスレットがアカデミー主演女優賞に輝いた『愛を読むひと』(監督:スティーブン・ダルドリー、2008年)は、彼女を愛した少年と、彼女との過去を封じたまま生きてきた男が、沈黙のうちに再びその記憶と向き合う物語である。 レイフ・ファインズが演じるその男は、『イングリッシュ・ペイシェント』のアルマシーや『ナイロビの蜂』のジャスティンと同様、激情を声にせず、過去に囚われて苦しむ人物である。彼以外にこの役の切なさは演じられないだろう。 この映画が秀逸なのは、女と少年の関係が軸にありながら、最初は退廃的にすら見えるその関係が、物語の進行とともにまったく異なる相貌を帯びていく点にある。 冒頭…