🌊【源氏物語283 第12帖 須磨17】しめやかの月の光の中を源氏が歩いてきた。二人は並んで月を眺めながら明け方まで語っていた。 〜西座敷にいる姫君は、 出発の前二日になっては もう源氏の来訪は受けられないものと思って、 気をめいらせていたのであったが、 しめやかな月の光の中を、 源氏がこちらへ歩いて来たのを知って、 静かに膝行《いざ》って出た。 そしてそのまま二人は並んで 月をながめながら語っているうちに明け方近い時になった。 「夜が短いのですね。 ただこんなふうにだけでもいっしょにいられることが もうないかもしれませんね。 私たちがまだこんないやな世の中の渦中に 巻き込まれないでいられたこ…