涙川 浮ぶ水沫《みなわ》も 消えぬべし 別れてのちの 瀬をもまたずて 〜涙川に浮かんでいる水の泡も消えてしまうでしょう。 生きて再びお会いできる日を待つこともなく。 【第12帖 須磨 すま】 源氏はまた途中の人目を気づかいながら 尚侍《ないしのかみ》の所へも別れの手紙を送った。 あなたから何とも言ってくださらないのも 道理なようには思えますが、 いよいよ京を去る時になってみますと、 悲しいと思われることも、 恨めしさも強く感ぜられます。 逢瀬《あふせ》なき 涙の川に 沈みしや 流るるみをの 初めなりけん こんなに人への執着が強くては仏様に救われる望みもありません。 間で盗み見されることがあやぶ…