木彫

今回の品は、能ではなく、狂言『福の神』の木彫です。 幅 24.5㎝、高 33.1㎝、奥 13.2㎝。重 651g。昭和。 粗く削られたボディに、華麗な彩色が施されています。 銘は、ありません。 模様はそれほど精緻ではありませんが、 要領よくまとめられています。 裏側にも彩色が。 少し粗削りですが、左足先を少し上げる所作も。 扇はくっつけてあります。 このような造りから、この品は奈良一刀彫ではないかと思われます。 今回の品の一番見どころは、面です。 こういう類の木彫は、たいてい、面が彫り込まれているのですが、 今回の品は、面が紐でとめてあります。 はずした面:縦 4.8㎝、横 2.9㎝。 面をと…

先回、何とも不思議な木彫作品を紹介しました。 巫女の姿でありながら、能装束をつけ、鈴を振りかざす女性像です。 しかも、能装束は、シテが蛇鬼に変身する時に用いられる特殊なもので、三角形のウロコ模様が全面の施されたものでした。 故玩館、木彫品展示コーナーの一角に、よく似た木彫がありました。 実はこの品は、すでにブログで紹介済みだと思ったのですが、どれだけ探しても出てきません。gooブログから移行した時、うまくいかなかったのかもしれません。 今回、あらためて紹介します。 幅 25.2㎝、高 21.7㎝、奥 18.3㎝。重 920g。昭和(戦前)。 銘「三楽」は、奈良一刀彫作家、寺瀬三楽のものです。 …

女性の舞い姿の木彫品です。 不思議な品物です。 m 幅 17.9㎝、高 28.4㎝、奥 12.4㎝。重 。昭和。 銘らしきものが彫られています。 「承」？ よくわかりません。 この品でまず目に入るのは、右手に持った鈴です。神楽鈴、巫女鈴といわれる物で、能、巫女舞、神楽舞などに用いられます。 もう一つの特徴は、素顔の女性です。 少し憂いをおびた顔に見えますが、 角度を変えると、笑顔に。 女性は、能で使われる蔓帯を頭に巻いています。 そして、身につけているのは能装束そのもののようです。 ということは、この品は能の一場面を木彫で表したものでしょうか？ しかし、面をつけない直面(ひためん)の女性が、鈴…

今回の品は、素人が作ったと思われる作品で、程度は高くありません。 しかも、演目もはっきりしません。 いわば、ガラクタ蒐集家の在庫整理ブログですが、よかったらお付き合いください(^^; ２個あります。 いずれも、軽く柔らかい木が使われています。 まず、能面をつけた女性の彫物。 幅 10.3㎝、高 23.0㎝、奥 5.9㎝。重 483g。昭和。 銘はありません。 能では、このような姿の女性は多く登場しますが、やはりポピュラーな演目、『熊野』のシテでしょう。 右手に扇を持っているのですが、手の彫り方がなってない。 能の姿勢ではなく、ただ、ボーッと立っているだけのように見えます。 動の中の静、静の中の…

能面作家、入江美法による能『木賊』の木彫像です。 幅 21.3㎝、奥 18.8㎝、高 45.3㎝。重 3.29㎏。昭和。 非常に硬くて重い木で彫られています。 顔のごく一部に墨をおいている以外、彩色はなされていません。 作者は、昭和を代表する能面作家の一人、入江美法です。 入江美法(明治二九(1896)年－昭和五十(1975年)：栃木県生れ。能面師。新面として軽く扱われていた現代能面について、芸術性を強調した作品を生み出し、能面作家の地位を確立した。著書に、「能面検討」など。 現代の能面作家では第一人者でありながら、自分の作品には印を押すに価する物はないとして、自作の能面には刻印や焼印を入れま…

能の木彫作家、関谷充の『弱法師』です。 幅 28.4㎝、奥 22.3㎝、高 49.7㎝。重 3.33㎏。昭和。 台座横に、作者名があります。 関谷充(明治三六(1903)年ー昭和58(1983)年)：能木彫作家。国画会会員。 先回の『翁』の作者、綿引司郎とほぼ同時代の人です。 先回の綿引司郎『翁』とは、だいぶ趣が異なります。 比較的粗い彫りです。 彩色は控え目で、長い髪と衣の裾が薄黒く塗られています。 また、墨で、眉や目、髭が描かれています。 人の讒言を信じた父により家から追放され、哀しさのあまり盲目の乞食となって各地をさまよう主人公、俊徳丸(弱法師)の姿です。 ざっと彫られた髪が、彼の運命を…

塑像作品に関して、修了制作で「作品をつくる事とはどういうことなのか」が少し分かるようになって以来この数点の作品で良いものがつくれるようになってきた実感を得ることが出来ました。 同時に今までやったことない制作に取り組むことで成長のスピードを上げていくことが出来るだろうと考えました。 （というより単純に未知への憧れ的なものであったかもしれません） 木彫を制作するにあたってまず考えたのはこれまでは必要なかったマケット（模型）が必要だということです。 特に木彫は未経験で全く勘がなかったので、どのように木取りをしていくべきか見当もつきませんでした。（粘土はつけて増やしていく中でのやり取りで形にしていくの…