手塚治虫のライフワークであり、後世の漫画家に多大な影響を及ぼした、日本漫画史に燦然と輝く最高傑作「火の鳥」は、1954年「漫画少年」に「黎明編」が書かれたのを始まりに、掲載誌を転々としながら、1986年小説誌「野性時代」に連載された「太陽編」が最後となった。掲載誌は5誌に及んだが、そのうち「漫画少年」、「COM」、「マンガ少年」がいずれも休刊となったことから、「火の鳥」が連頼されると雑誌がつぶれるなどというジンクスがあったという。私は既に全巻数回読んでいるが、今また何度目かの読み直し作業に入っているところである。読んでいるのは角川文庫版という文庫本サイズの小さな漫画本で、黎明編に始まりギリシャ…