浮雲日記:富田常雄 1952年(昭27)湊書房刊。 1955年(昭30)東方社刊。 明治中期の自由民権運動から日清戦争に向けて、まだ日本の近代化が形を成すに至らない時代の青春群像を描いている。武芸全般を修めた主人公の春信介は、身体一つで上京するが、すぐに騙されて牛肉屋に住み込みの身となる。その後、男爵家の書生、車夫、壮士節、新聞記者などを試みるが、好男子のため先々で娘たちに恋焦がれる立場となる。硬骨漢で独自の人生観を持つ彼は情に流されることなく生きて行く。この作者の代表作「姿三四郎」と似通った求道者の姿が見えた。恋に生きる女性たちの心情の変容についても巧みに描き出していた。☆☆☆ 国会図書館デ…